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カラダからはじまった愛は

第5章 逢瀬

 7月、瑠衣はまだ営業所の受付に勤務していた。転勤になった哲は、福島営業所のお客様との打合せを何件か残していたから、週のうち何日かは福島に来ていた。

 瑠衣は、哲の打合せの時は、哲の姿が見やすいようにわざと真ん中のブースを指定したり、2階の瑠衣のデスクから哲の席がよく見えて、周りに気づかれないように哲を見つめていた。

 打合せの終わりを見計らって、給湯室でおにぎりを渡したり、周りをうかがいながらちょっと背伸びして哲とのキス…   

 秘事は慎重に、

そして時には大胆に行われた。

 哲が午後3時過ぎの打合せで仙台からくる、瑠衣は休憩時間を1時から取った。

「2時ころまで時間、大丈夫?」

 哲からの大丈夫との返事を待つまでの間に近くのホテルを調べた。5分とかからないところにある。哲と会社の外ので待ち合わせをし、すぐにホテルに向かった。1時間とないその時間に、ふたりは求めあった。会いたかった、少しの時間でも触れ合っていたかった。激しく求めあい全てを受け入れて、やさしく癒やされて愛を確かめ合っていた。

 平日の昼下り、わずか1時間にも満たないふたりの逢瀬は、7月の太陽にも負けないくらいにあつかった。

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