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カラダからはじまった愛は

第5章 逢瀬

 8月に入り瑠衣はいよいよ展示場に移動になった。営業所から展示場までは車で約15分。
出勤時と退社時には営業所に顔を出すが、そこに哲がいることもだんだんと少なくなってきていた。駐車場に着いて、哲の車が無いのを確認するたび、ものさみくて、むしろ展示場に移動になってよかった、と思うようになっていた。

 哲は少しの時間とスケジュールの隙間をつくっては瑠衣に会いに展示場に向かった。

 展示場には平日はほぼ、瑠衣ひとりだったから。

 決して近くない、1時間半もかかるんだからむしろ遠い道のりを会いに来てくれる、それだけでも瑠衣は哲に大切に想われていることがうれしかった。「あと10分位」そんなメールが届くと、瑠衣は展示場のブラインドを少し下ろし、手を洗い髪をとかし口紅を塗り直し、ソワソワしながら哲の車が見えるのを待った。哲が照れたように「来ちゃった」というのがうれしくて、事務所の電気を消して哲の唇を求めた…。誰かくるかもしれない、そんな怯えた気持ちも、甘くやさしいキスの中でふたりを大胆にさせていった。 

「…上に いく?」

 建物の中3階は天井の低いロフトになっていた。

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