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カラダからはじまった愛は

第5章 逢瀬

 他に誰がいるわけでもないけれど、展示場でのふたりは囁きあうようにくちづけで想いを伝えあっていた。いつ、誰がくるかもわからない、そんな秘めた短い時間でさえも、抱き合って求めあった。瑠衣の押し殺した喘ぎ声も哲の荒い息づかいも、すべてかふたりにとって愛おしい時間だったから。 

 土、日。展示場に営業担当者が打合せで来ているような日は、展示場近くの神社の駐車場で落ち合った。哲の車の後部座席に座り抱き合った。瑠衣はワイシャツにファンデーションが付かないように、哲のシャッのボタンを外した…。
 
  哲の福島営業所での打合せ終わりと、瑠衣の帰り時間が重なった時には、近くのレンタルビデオ店の駐車場で待ち合わせた。後部座席に身をかがめ、小さくなりながらキスをした。指を絡め合い何度も何度もキスをした。

 公園の駐車場、スーパーの立体駐車場、時にはショッピングモール内の化粧室…ふたりにとって場所はどこてもよかった。ただ人めを避け、ふたりきり、触れ合って抱き合ってキスをして、愛を伝えあっていたかった。

 わずかな時を愛おしむように愛し合っていた。

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