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カラダからはじまった愛は

第6章 決心

 ふたりで初めての朝を迎えた日、瑠衣はある決心をしていた。

 全てをきれいにして
   哲男さんと 愛し合いたい

 瑠衣には多額の借金があった。

 瑠衣が夫のために用立てたお金だった。

 夫は見栄っ張りで金遣いが荒く、そして、働かなかった。俺が出ると従業員の出勤日が減るから、飲みに出るのはお客を増やすためだ、と言っては仕事もせずに昼間はパチンコ、夜は飲みに出る、そんな暮らしぶりだった。
 もっと自分で働いてほしい、と何度口にしても、お前は何にもわかってないんだから黙ってろ、俺はもっと先のことを考えてるんだ、と言われるだけだった。 

 信じよう

 自分にそういいきかせた。
私を好きだ、愛してるというこの人が、
こんになにも尽くした私を
だますはずがない  
   
 この人は、自分では働けない人なんだ、

長年のうちにそう思い、諦めていった。

 自分が働けばいいや  

そう思い、保険の代理店、食品会社のラウンダー、ハウスメーカーのパート、害虫駆除、ビルの清掃、代行の運転、会社の経理、
いくつもの仕事を同時にこなしていった。

 それでも、瑠衣の収入は全て夫に管理されていた。

 全てがもう飽和状態だった

 収入も生活も考えも、長年の間に縛られていった瑠衣が、今の生活から抜け出ることは、とても容易なことではないことはわかっていた。 

 それでも、

 全てを きれいにしたかった。


 それは、 

哲さんとは関係のないところで 

自分だけの決心で

 夫との決別を 考えていた。


 
 

 

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