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カラダからはじまった愛は

第7章 運命が動き出す時

 10/19 夫がゴルフに出かけていない日の夕方、瑠衣は夫には内緒で、あるアポイントを取っていた。
それは、8年前にも訪れた司法書士事務所。
 
 その当時も瑠衣は夫に借金をさせられていた。
出会った時に持っていた600万の貯金の半分を夫の借金返済のために使った。これから一緒にやっていくために、と。それから3ヶ月もしないうちに夫は会社を辞めてしまった。
 そして、瑠衣を旅行やパチンコに連れて歩いた。どんどんお金は無くなっていく、働いてもいないのに遊びたくない。そういうと、俺がちょつと働けば50万位にはなるから、という。
 夫の強引さに呆れながらも、それまでお金を使うことを知らなかった瑠衣には、新鮮でもあった。落ち着いたらきっと働いてくれるだろう、そう信じていた。

 瑠衣の貯金が無くなり、はじめてサラ金の窓口に行かされた時、瑠衣は、どうして自分がこんな所にいるんだろう、どうしてこんなふうに…
悲しさでいっぱいになりながら、
でも、今ここで借りないと、次の支払いができなくなる、親にも迷惑がかかる…
 将来のことを考えると親兄弟に夫のことを悪くいうことができなかった。   
 
 そうやって借金を重ねていくうちに、

「金の切れ目は縁の切れ目」っていうけれど、
借金してるのも、逆に別れられない理由になる
んだとわかった。
今別れたら今までこの人のために用立てているお金が戻ってこない。せめて、身内から借りたお金だけは返して貰わないと…

 そんな風に考えてしまい別れられない

 きっと悪い人じゃない
信じて一緒にがんばっていこう

 そう自分に思い込ませ、
それをしあわせだと思おう…。

 常に夫を立てて、夫の束縛も愛されているから、わがままも寂しがりだから、私に非がなくても謝れば丸く収まるから。  

許して、我慢して、従って、尽くして…。

 スーパーの化粧室で【DV相談】のカードを手にして、こっそり持ち帰ったこともあった…。
でも、電話する勇気はなかった。
 
 まだ 我慢できる

そう思ってしまったし、
家を出て帰れる場所もなかったから。
私自身が親兄弟に全てをさらけ出す勇気がなかった…。

 

   

 
 

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