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白虹(龍虹記外伝)~その後の道継と嘉瑛~

第1章 夢

 月の光によって生じる白色の虹は、月虹と呼ばれ、光が弱いために、色彩が薄く見える。これはまた、白虹ともいわれ、白虹は〝白虹日を貫く〟という諺もあるように、昔、中国で内乱が起こる前兆と伝えられていた。または、真心が天に通じたしるしとも云われ、いずれにせよ、何らかの天意を示唆するものだと受け止められてきたのである。
 通継は自然の織りなす神秘を今、何か神々しいものでも見るような想いで見上げていた。
 内乱といえば、まさしく内乱には相違ない。嘉瑛と通継の戦いは群雄割拠するこの乱世の日の本の国での小さな国と国との戦(いくさ)なのだから。果たして、この不思議な白い虹が瑞兆となるか、凶兆となるか。それは御仏のみぞ知り給う。
 通継はそれからしばらくの間もずっと立ち尽くしたまま、魅入られたかのように夜の虹を見つめていた。
 後に〝白虹の変〟とも呼ばれた白鳥の戦いの火蓋が切って落とされるまで、あと半日余り。
 刻は緊張を孕んで刻一刻と過ぎつつあった。

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