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Melty Life

第3章 春


* * * * * * *

 千里は、隼生に頼み込んで拝借してきた資料をめくっていた。全生徒の個人データの載録された分厚いファイルだ。


 昨日ゆうやと歩いていると、例の女子グループとすれ違った。

 彼女達は、日頃から色んなタイプの異性と関わる機会を持つ千里にも、抜きん出て印象に残っていた。
 装飾的で明るい、パーティー向けに誂えられた花束を連想する女子グループは、その時も翳り一つない笑顔を交わして、公共の場での雑談にしては大きすぎる声ではしゃいでいた。


 品性も何もないな、と、またぞろ千里が口を押さえなければならない暴言を吐く親友を連れて、場所を移した。ただし、彼女らとあかりの関係を調べた方が良いのではないかという彼の意見には、同感した。

 千里と違って、あかりは水和に告白するまで、自分を慕う少女らの想いに必要以上の応酬をしていたところがあったようだ。もしそうなら自業自得だったと言え、今回の件の原因に、もっと複雑な事情が絡んでいたのだとすれば、生徒会長として放っておかないに越したことはない。

 手始めに問題の少女達の個人データに目を通したのが、今しがたである。

 宮瀬咲穂は、あかりの妹だったらしい。


「…………」


 いや、千里は、それ以上のヒントを掴んだのかも知れない。


 ゆうやはあのような風貌をしているが、アルバイトの都合上、ある程度は仕方がない。それに彼には、ほぼ無学な状態から、実力で当校に進学してきた実績がある。そのゆうやが、いかにもしっかりしている家庭に生まれ育ったような咲穂を、品性がないと罵った。

 彼の暴言は、千里の着目に影響を及ぼした。

 あかりと咲穂は似ていない。似ない姉妹でも、ここまで他人のような顔をしているのは、珍しい。

 加えて咲穂が入学考査試験で得た点数は、及第点からほど遠い。どれだけの金を積まれても裏口入学には応じてこなかった隼生が、何故、彼女は受け入れたのだ。








第3章 春──完── 

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