Melty Life
第4章 崩壊
男は、同じ屋根の下に住まわせている少年を床に叩きつけた。
「ぐあっ……!!」
暗く澱んだこの家に、燦爛たる少年の髪は目に眩しく、こめかみの奥が痛くなる。
男は少年に馬乗りになって、金髪を力任せに掴んだ。薄肉の這う頭蓋骨を床に打ちつける。
衝動が男を虐使するほど、少年も人間らしい反応をきたす。少年が生身であっても自我をなくした人形でも、気味の悪い大きな子供なのには変わらない。男はいっそう無慈悲を極める。
少年は、男の息子ではない。
書類上の親子の縁はやむなく維持しているが、今自分の股下で荒く息を吐き出しているのは、男からすれば金のために飼ってやっているだけの異物だ。
今朝は、些細な不快に駆られて、男は少年の頬を殴った。
少年の顔は、男からあらゆるものを奪った女に似ている。彼女自身の産み落とした異物と、一桁もなくなった通帳とを残して男の元を去った女を殴った錯覚がして、ひどい快楽が男を襲った。快楽は男に二度目の手を上げさせる。衝動に突き動かされて少年を痛めつけている内に、自分がどうして怒っていたか不明確になる。かつて女から搾取された自分が、その肉体から産まれ出た異物に責任を負わせるべきだという動機だけ、はっきりしていた。