Melty Life
第4章 崩壊
「分を弁えろ!!生意気な奴隷!!俺のために死ぬ気で働け!!」
少年は、放心した目つきで男がぶつけてくるものを受け入れていた。
側から見れば、不良息子を折檻している父親ともとれるか。しかし、少年の部屋にそれらしい要素はない。
寝台に机、衣装ダンス、本棚。本棚には、少年が男に無断で購入した教材と、少年が男に無断で入学した学校の教科書が並んでいる。
机には、いつも同じフォトフレームが伏せて置かれている。
「…………。はぁっ」
男が机に近づくと、足下から衣擦れの音がした。
「何だ、その目は」
「ごめんなさい」
「ふんっ」
男はフォトフレームを表に返す。
少年の動揺は分かりやすかった。入っているのが彼の母親に関するものでなくても、かき回すだけの値打ちがあるかも知れない。
「…………」
男を謀り、閨房の相手に支払う対価としては高額すぎる金銭を根こそぎ持っていった女の写真ではなかった。
二人の子供が写っている。一人は、幼い頃の少年だ。もう一人は、覚えがない。