Melty Life
第4章 崩壊
「お前は、自分を人間だと傲っているのか」
「…………。ごめんなさい」
少年は、男に謝罪を繰り返す。
ごめんなさい。ごめんなさい。その写真は、ここに置かせて下さい。お願いします。ごめんなさい。
男は滑稽に這いつくばる少年の頭を、踏みつけた。
もじゃもじゃした不快なこそばゆさを足の裏で押しやると、少年の額が床にこすれた。
「汚物のようだ」
「ごめんなさい……」
少年は、この写真のどこに、価値を見出しているのか。
一緒に写っているのは、少年と同い年くらいの少女だ。レースやフリルのふんだんに付いた服を着ている。金回りの良さそうな家の子供だ。今は高校生くらいだろう。金蔓にするには早い。
写真の時分、男には地獄に等しい日々だった。
少年は、成長するにつれて女の面影が増していった。妖しく悩ましげな色香を匂わせた面立ち。十にも満たない子供にそのようなものが現れた時は、ぞっとした。
ただし、人間を惑わすには、少年はまだ幼かった。最低限の義務教育を受けさせて、中学に上がったところで知人の営む不正ポルノの運営会社に売り飛ばすはずだった。物好きな知人は、少年を彼の知人のモデル事務所に紹介した。
少年には、男の管理の行き届かなかった時間がある。小学生時分の放課後は、どこで過ごしていたか。交友関係も、男は知らない。