Melty Life
第4章 崩壊
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滅多に仲違いはしない、初恋の相手が同一だったと明かし合った時でさえ対立しなかった同級生と、千里は生徒指導部室の真ん前で掴み合いになりかけた。
と言っても、扉を隔てて教師がいる。
二人は手を引っ込めて、口論しながら昇降口へ移動した。
靴を履き替える段階になると、千里は自分のさしでがましさを詫びて、ゆうやは反抗的な態度を省みた。
「お前の世話焼きは、お前のせいじゃねぇよ。俺こそ、悪りぃな。正しいのはお前だよ」
「ううん、悪い癖なんだ。こうだと思ったら周りが見えなくなって、つい相手に押しつけたがる。ゆうやに初めて会った時も、こんな過ちをしたね」
あれから三年近く経った。ゆうやと同級として一緒に過ごして、二年と少しだ。
その間、千里は自分も少しは成長したつもりでいた。
根本は十五歳のままだった。
さっきも、ゆうやが生徒指導部に呼び出された理由を知るや、長い説教から解放された彼を、教師の元に押し戻そうとした。
ゆうやが呼ばれたのは、彼の頬の青痣に、生徒指導部の教師があらぬ憶測を持ったからだ。彼は得意のグレた姿勢を装って、地元の不良と喧嘩したと説明した。
彼に血の気の多い知人はいない。いたとしても、彼の体育の成績からして、交戦は得意分野ではないだろう。もとより千里には他に心当たりがあった。
「専門の機関に相談するのが難しいなら、ゆうや一人くらい、おじいちゃんに頼んで何とかしてもらうよ。俺の出世払いで」
「でしゃばりを反省したばかりじゃなかったのかよ」
「口先だけで友達の不幸を心配してばかりもつらいんだよ。行動に移さないと、ゆうやだって俺がどれほどお前が大事か分からないだろ」
「お前に関しては、口だけで十分だ。俺も今年で十八だぞ」