Melty Life
第4章 崩壊
その、ゆうやと同じ十八にもなろうとしている少年は、未だ親の敷いたレールを歩いて、親の望みにただ従っている。
千里に比べれば、例えゆうやが実父に愛想を尽かして来須の保護を望んだとしても、誰も彼に後ろ指など差すまい。
「お前には、そこまで俺に構っている余裕はねぇよ」
校舎を出て、数時間振りに時計を見た。
存外に時間が経っていた。
千里がゆうやを昼食に誘うと、多忙な彼は、気の利いた返事を寄越さなかった。
「俺さ、何だかんだ花崎さんはお前を選ぶと思ってる」
「そうか?」
「俺も、お前なら良いかと思う」
親身な親友の激励だ。
こんな状況でなければ、ありふれた男子学生が友人に恋愛相談して、楽観的なコメントをもらって喜ぶ場面だ。
しかしゆうやの口ぶりは、千里の苛立ちをぶり返させた。
「俺達は勝負してるんじゃないよ、ゆうや」
「ん?」
「花崎さんに、俺達の気持ちに付き合ってもらっているだけ。彼女が誰を選ぶとか、俺達の中の誰が幸せになるとか、そういうことじゃないと思う」
「ああ」
「将来、進路も離れて会えなくなって、花崎さんにあの時言っておけば良かったって……そう思いたくないから伝えようって、ゆうやも俺も言ったよな?」
水和には、千里を選ぶ根拠もない。この想いは日ごとに増しても、彼女の想いを勝ち取ってまで共に歩みたいのとは違う。
千里は、自由な水和の姿に惹かれた。
万が一彼女が自分を望んでくれたとする。彼女の世界に自分の色が滲まないよう、彼女に必要な分の線引きはする。代わりに彼女の帰る場所として一番の安らぎであるよう努める。彼女が恋愛に興じないなら、遠くから、そんな彼女を尊ぶ。