Melty Life
第4章 崩壊
水和は、校則でアルバイトが禁じられていることを恨めしがりながら、一度見た店にもまた戻ったりして、商店街を行き来する。彼女の好む系統は、特に厳選しなければ予算が追いつかない。
優柔不断でごめんねと眉を下げる水和にあかりは笑いながら、心底、一生決まらなくても良いと思う。買い物が終わらなければ、自分はずっと彼女とこうして歩いていられるのではないか。一日には限りがあるから、結局、それは無理な妄想だ。
「やっぱり、これにする」
「いつも有り難うございます。こちらのピンクで良ろしいですか」
「はい、お願いします。このお洋服考えた人、天才だと思います」
「ふふっ、お気に召して頂けて嬉しいです。スパークルオーガンジーがスカラップ裾の段になっていますから、パニエなしでも広がりますし、ボレロを合わせて頂ければ、季節関係なく着回せますよ。私も白を持ってるんです。オリジナル柄のレースも本当に可愛いですよね」
水和が満足する頃、街は他校の生徒の姿も増えてきていた。大学生くらいの仲良しグループや、定時上がりの会社員達らしい姿もある。
買い物を厳選したと言っても、水和が三店舗で新調した洋服の入ったショッパーは、学校指定の鞄も合わさると重たそうだ。あかりは遠慮する彼女を押しきって、電車まで半分荷物を引き受けた。