Melty Life
第4章 崩壊
「あかりちゃんは、どっか行く?」
「いいえ。私も大体、今日行った辺りが好きなので」
「遊園地行った時も皇子様っぽかったもんね」
「水和先輩の影響です。元々、周りの子達が勧めてくれてて、気になってたのもあって」
ただただ他愛ない時間を過ごす。
それは水和が相手なら、こんな感じなのか。
優しく甘く、綿菓子にでも抱き込まれているようだ。つらくなるほどの幸福。痛みは、ない。儚く確かな幸福は、生気さえ漲っていく気がする。
駅までの距離はあっという間だ。改札を通ってしまえば、それから別れまではあっという間だ。電車は同じでも、水和の方が先の駅だ。
「まだ明るいね。これから遊びに行く子達、元気」
「水和先輩とあたしも、結構、元気でしたよ」
「あの、……良かったら」
「どうかしました?」
電車の到着を知らせるアナウンスがホームに響いていた。
「良かったら、家、ちょっと寄らない?お父さん帰ってくるかも知れないけど、テレビ観たり夕飯の準備したりするから、顔出してこないと思うし……」
水和があかりを見つめる目は、本当に他愛なかった。
自分に想いを寄せる相手に対して、信頼しきった彼女の態度は、あかりの胸裏を抉るほどの殺傷力もない。
このまま時が止まってしまえば良い。
純潔な想いで惹かれた水和と、穏やかな時の中にいられるのなら。