テキストサイズ

Melty Life

第4章 崩壊


 特別許可をとってアルバイトをしているだけならまだしも、ゆうやが改められる類の校則違反も省みない生徒であるというのは、淡海ヶ藤には無関係の父親の耳にも届いている。しっかりした世間体を維持すべく、一人息子の素行にも常に目を光らせている両親は、ことあるごとにゆうやの粗探しをする。


 今日も父親がゆうやの話を持ち出したのは、さっきの一件が彼の耳に届いたからだ。


「千里を心配して、知らせてくれる先生がいるんだ。あの子はまた問題を起こしたそうじゃないか。おじいちゃんも、どうしてあんな問題児を退学にしないのか……」

「周りに迷惑かけてない。成績も良い。退学にする理由がないからさ」

「迷惑ばかりかけているじゃないか!いいか、千里。お前と同じ制服を着たヤツが、外であんな素行では、世間はお前の評価まで下げる。もちろん、学校自体の評価もだ。この意味が分かるね?」

「ああ、ゆうやが本物の悪いヤツならね。ただ、誰にだって話したくないことがあるだろう。自分が不良に見られたって、話せないことがある」


 千里が口答えした記憶はほとんどない。両親がゆうやとの交流を追求してくるようになってからも、親友の言われようは未だ胸に堪えるが、彼らに弁明は通じない。
 ゆうやとの交流はほどほどにしている、生徒会長として一人の生徒を蔑ろにするわけにはいかない、中等部から仲良くしている友人とは今も最も親しい。それらしく言い逃れをして、千里はその都度、両親の追及をしのいできた。 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ