Melty Life
第4章 崩壊
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痛切な想いを寄せる相手と一緒にいると、例えばそこが雑踏でも、世界でたった二人きりになってでもいる錯覚になることがあるという。
水和と並び歩く住宅街は、確かに、みだりがましい関係を共にした少女と密室にでも閉じこもった以上と思えるだろうほどには、あかりを落ち着かせなくさせた。淡く穏やかな炫耀が、キラキラと胸に落ちていく。恍惚とした白いものが胸を満たしても、苦しくそこあれ、ずっと溜め置きたいと願う。
初めて彼女と下校した時も、出かけた時も、演劇部にお邪魔した時も、あかりはこれ以上の喜びは望めない気がしていた。
幸福が何かも漠然としている。それに水和との時間は濃密すぎて、あかりの許容量では受け止めきれない。
ただ唯一、こうした柔らかで優しく甘い恍惚に包まれるひとときが、たまらなく愛おしい。それならあかりは、水和の日常の片隅にでもいられる限り、何度でも代え難い時間を見出すのだとも思う。
世界でたった二人きり、永遠を切り取った一瞬の中にとりこめられてしまっても、その方が、恐れも失くしもしなくて済むかも知れない。
水和の私宅に到着した。
和洋折衷の二階建ての一軒家は、一歩踏み入ると、水和の香りがそこかしこに染みついていた。家族のいる気配はない。小綺麗な廊下は余計な雑音がなく、整然としている。