Melty Life
第4章 崩壊
「チラッと見えちゃいました。さすが水和先輩、やっぱり洋服持ちだったんですね」
「散らかってるのに恥ずかしいよぉ。そうかな、動画サイトとかで見るお部屋紹介の人達には敵わないよ」
「あの人達は、ほとんど学生じゃないですし。でも、可愛い。水和先輩、絶対パステル系だと思っていました」
「もう、ほんと、自分から呼んでおいて照れてきた……。良かったら今度、あかりちゃんの部屋もチェックさせてもらわなくちゃ」
水和は恥じらいを訴えながらも、洋服や装飾雑貨、ロリィタやガーリー路線の雑誌を出してきては、それらについての話をした。思い当たる共通の話題がそれくらいだからか、水和なりの気遣いかも知れない。
それからあかりが求めたのは、水和の演劇にまつわる話だ。過去の舞台のタイトルを挙げると、水和ははにかみながらも屈託ない笑顔で、その時々のエピソードを返してくれた。
今稽古中の演目について、水和はネタバレを防ぎながら自分の役の所感を語った。卒業旅行中の、高校生でも大学生でもない少女。天真爛漫な彼女は、嫌なことがあっても眠っている時の夢だと思い込むことにしている。すると本当に目が覚めると楽しい現実が待っていたのに、ある時、彼女に、自分が意思のない人形だったのかも知れないという疑念が生じる。私なら強欲な人間として生き続けるより、いつまでも変わらない人形になるのも一つのハッピーエンドと思うかも、と、水和はおどけた。