Melty Life
第4章 崩壊
「そうだ、琥珀糖とか好き?食べない?」
「良いんですか?好きです」
「わぁい!試験終わったら開けようと思って、楽しみにしてたんだ。一人で食べるより美味しいし」
水和はレースのような装飾に縁どられた皿を持ってきて、カラフルな擦りガラスを彷彿とする和菓子を注いだ。控えめな、小気味の良い音が弾け立つ。小石ほどのサイズの琥珀糖は、口に含むとさっくりとした甘みが広がって、表面を崩すとつるんとした爽やかな塊が出てくる。
「人をお招きしたの、久し振りだなぁ」
「友達とか呼ばないんですか」
「小学生の頃以来。淡海ヶ藤入ってからは、皆、家遠いでしょ。誘いにくくて。でも、何となくあかりちゃんは、近そうだったから」
部屋は想像していた通りだった。しかし水和自身には、まだまだあかりの知らない側面がある。
水和が洋服に関して他者からの干渉を受けるのを不得手としているのも、両親が主な原因らしい。淡海ヶ藤は厳格な家庭環境で生まれ育ってきた生徒が多い。水和も例にもれなかったらしく、幼い頃は、母親の方が好んで彼女にガーリーな格好をさせていたようだが、中学校に上がると、そういうお伽話の具現同然のものからは娘を剥離したがった。加えて公立小学校時代は、服装のせいで、同世代の少女達と馴染めなかったところがある。