Melty Life
第4章 崩壊
「そんな小学生の頃、私と仲良くしてくれていた男の子がいたんだ。中学で離れてしまって、ゆーくんって呼んでいたから、今じゃフルネームも分からなくて。どこにいるのかな」
「その人が、最後に水和先輩の部屋に来た人?」
「うん、その子と、あかりちゃんだけ。人見知りの私が勇気を出して、呼んだのは」
水和は思い出の少年との日々を振り返って、あかりに話した。
彼は水和がクラスメイトにからかわれていたところを助けた恩人でもあって、彼をここに呼んだ時は、母親も一緒になって歓待したのだという。難しい事情の家庭の少年だったようだ。満足に食事を与えられていなかった彼に、水和はこっそりチョコレートを持ち帰らせていたこともある。水和が同世代の女子達より彼との友情を優先していたのと同様、彼も水和の見た目ではなく、内面と向き合ってくれていたのだという。
控えめな甘さのすりガラスが、本当に甘みを失くしていく。
苦味とまではいかないまでも、存在を主張しない、糖度などすぐに弱まる琥珀糖は、まるであかりの内側を映している。水和が、少し他の人間の話をするだけで、自分と比較してしまう。自分の存在など、急にあってないもののように感じる。
その少年と、あかり。水和は、どちらにより価値を見出すか。