Melty Life
第4章 崩壊
華やかでか弱い花のような造形ではない、あかりのそんな特徴が、感じやすい少女たちに言わせてみれば中性的という褒め言葉に当て嵌まるらしい。現にあかりはキスを求めて拒まれたことがない。それ以上の行為に持ち込むのにも、過去の彼女達とは初めからそういう目的で互いに時間を合わせていたのを差し引いても、あまりに容易かった。
しかし無意味だ。水和のものになれなければ。
「水和先輩が相手じゃ、あたしなんて」
「え」
「ごめんなさい、そろそろ、失礼します」
あまり遅くなっては悪いから、と、口早に告げて腰を上げる。
耐えられない。こうも純粋なかけがえなさは、どろどろと心臓にまとわりつくヘドロのような制御出来ない欲望を潜ませている。想いに等しい、純粋な顔で水和の近くにいるだけで、満足なのに。
「水和先輩」
玄関まで見送るからと、寝台を立ち上がった水和の右手首を引いた。
捕まえられない、だから触れられる時に触れておく。多分、そういう思考も働かなかった。
「んっ、……」
「は、ぁ」
幻のような肉厚の花びらからキスを離すと、とろんとした目があかりを見ていた。ブルーグレーの双眸の奥は驚きに開いていた。
「え、あの……」
「今度こそ帰ります。これ以上水和先輩といたら、我慢出来そうになくなるから」
階段を降りると、水和の父親と顔を合わせた。会釈して、あかりが靴を履いていると、後方から口論らしい声が聞こえた。
帰宅して、水和は一端席を外して、普段着に着替えていた。ピンク地に白いストライプの入ったワンピースは、襟元から裾にかけてフリルが縫いつけてあって、裾に同系色のチュールが覗く。今日はいつからこんな格好をしていたのだとか、下級生の前に出るには年相応ではないだとか、父親の神経質な小言は続く。