Melty Life
第4章 崩壊
この日の撮影は日没前に終わった。メイクを落として普段着姿に戻ると、ゆうやはまりやの待つホテルへ向かった。
高層ホテルのレストラン。
ディナーを予約してあるというが、自分の事務所のモデルと寝たがる不良の社長は、きっと部屋も確保している。
一等地の景観の主役を張るホテルは、受付係を含む数人の人間達が、エントランスに現れたゆうやに対し、あからさまにぎょっとした顔を向けた。フォーマルな佇まいの大人達が行き交うロビーで、ゆうやだけがラフな格好をしていたからだ。
人間は、何故、こうも見た目だけで他人を測るのか。
そう言えば昔、ゆうやのいた小学校でも、随分と服装で苦悩していた少女がいた。
彼女はメルヘンチックな洋服を毎日着ていた。とりわけ単純に物事を捉えがちな小学生達は、彼女をぶりっこだの自己主張が強いだの酷評して、なじっていた。せめて彼女が強気で積極的だったらあんなにも孤立しなかったのだろうが、反論一つ返せないような子供だった。いつだったか彼女が例のごとくからかわれていたところを、見かねたゆうやは助け出した。それからの彼女のゆうやへの懐きようは、よくある女子の仲良し二人組に劣らなかったのではないか。彼女とは無邪気な遊び友達になった。