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Melty Life

第4章 崩壊




 一面ガラス張りのフロアで、茜色を残した夜空を背負ったまりやは、臙脂のナイトドレスの裾を揺らしながらゆうやに向かって片手を挙げた。

 試験最終日、久し振りにまりやに心配をかけた。
 千里と分かれて、あのあとすぐに撮影に向かうと、まりやが控え室を訪ねてきた。彼女がモデルの撮影に居合わせるのはよくあることで、ゆうやは普段通り彼女を迎えた。化粧前だった。そこで教師には喧嘩をしたと言って誤魔化した顔の傷が、まりやの目にも触れたのである。この程度ならコンシーラーに覆えば良い。そう言うゆうやにまりやは目くじらを立てた。そういうことを言ってるんじゃないの。子供を心配する母親がどんなものかは知らないが、少なくともあの時、ゆうやはまりやが顔も知らない母親に重なって見えた。

 母親。

 そう言えばあの過剰装飾好きの少女の母親は、テレビドラマから抜け出してきたような人物だった。朗らかで優しく厳しい、少女と同様、温かな家庭の情景によく馴染んでいた。


 ゆうやにとって、女とは何だ。

 自分を育てた父親がかつてそうであったように、金を巻き上げる対象か。そしていつか自分も返り討ちに遭う。それとも友達か。それとも、身体は汚れきっていても、恋愛感情を満たし合いたいと望んで良いのか。


 何のために生まれてきたのか、ゆうやほどの年頃になれば、一度や二度は考える。

 少なくともいつまでもこんなみじめにひっそり生きるために、産み落とされてきたのではない。昼間に話したモデルに指摘を受けるまでもない。

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