Melty Life
第4章 崩壊
ふわっ、と、柔らかなものがあかりの腕に絡みついた。
馴染みのある苺の匂いが臭覚を包む。昨夜あかりも使ったシャンプーの残り香を連れた眞雪の髪が、顔のすぐ近くで揺れたのだ。
「友達として出逢ってなければ、私があかりの彼女候補になりたかった」
「どうしたの、いきなり」
「そうしたら、私が、一番近くであかりを守れた。……友達として好きだけど。誰よりもあかりを守りたいよ」
あかりの腕に自分のそれを絡める眞雪は、傍目からすれば、多分、かなり可愛い。
眞雪とは友人でいるのが心地好い。あかりだけでなく、眞雪もそう思っている。しかしあかりは友人としてでさえ、眞雪に頼りきれないところがある。眞雪が頼りにならないのではなく、自分に歯止めをかけてしまう。
今も、怖い。家に向かうのが。
手でも繋いでいて欲しいくらい、怖かった。
そうした本音をあかりが見せる前に、眞雪は求めるものをくれた。守られたいとは思わないにしても、一人きりになりたくない。守られたくても、望んでしまえば、きっともっと戻れないほど弱くなる。
「あたしの一番は眞雪だよ」
「え」
「例えば、花崎先輩とデートの予定があったとして。その時、眞雪が困ってたりしたら、あたしは眞雪のとこに行く。何でも話す。それくらい、一番だよ」
「…………」
「恋愛感情が最上級って、決めちゃうことないと思うから」
全てを手に入れることは難しい。あかりは友人に恵まれすぎた。
家族との仲が不調和だったところで、思い悩んでは贅沢なんじゃないか。