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Melty Life

第4章 崩壊


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 こうもゆうやゆうやと親友ばかり気にかけていると、自分の意中は誰だったものか──…千里は人知れず苦笑いした。



 二限目の開始を告げるチャイムがまもなく鳴る頃、千里と机一つ挟んで着座していた隼生が受話器を置いた。


 授業と授業の僅かな合間に千里が理事長室に足を運んだのは、急ぎの頼みがあったからだ。

 ゆうやが遅刻していることが分かった。撮影らしい。所用の真偽は分からないにしても、彼は真面目だ。やましい理由で遅刻するはずのない一生徒を教師らが不当に詰問しないよう、千里は隼生の助力を求めたのである。


「ありがとう、おじいちゃん。今度、骨董品でも持って行くよ」

「気にするな、千里。当校の先生がたは熱心というか真面目というか、竹邑くんのことにしても、細かいところが気になるんじゃろう。世の中には色んな事情の子がいるのにのう」

「分かってくれていて心強いな。ゆうやに出逢う前は、俺も世間知らずだったしね。……って、今でも無知な箱入りか」

「なぁに、千里も社会に出たら、いやほど色々知ることになる」

「うん。でも、俺はそれまで待てないんだ。今すぐ変えていきたいことが山積みでさ」


 ゆうやも千里の両親も、この隼生でさえ、やましいものを秘匿している。ともすれば千里はとても由々しいことを何一つとして知らないで、呑気に日々を送っているのだ。

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