
Melty Life
第4章 崩壊
言い訳だ。
千里はセンシティブな問題に弱いだけだ。
今朝も千里は、ゆうやが苦し紛れの嘘をついたのにも関わらず、信じきった振りをした。千里もゆうやが未だ女に身体を提供していることくらい、勘づいている。勘づいているくせに何も言わないで、水和に一途な恋仇として、ゆうやに対等に接してくるのだ。
「お前のじいさん、宮瀬の親に弱みでも握られてたりして」
「どんな?」
「知らねぇ。まぁ、じゃなきゃ、いくら在校生徒の妹でも、あの頭で性格まで破綻しやがってて、合格なんざ出ねぇだろ普通」
「…………」
結局、千里はこの話題を打ち切った。
今夜は仕事を入れていない。こんな日くらい、ゆうやも滅多に得られない親友との下校時間を、辛気臭い話題に奪われたくない。
ゆうやの胸裏が天に届きでもしたのか、そこから駅までの道のりはとりわけ楽しいものになった。
千里は各部の事情に詳しい。演劇部も例にもれなく、次の文化祭ではその方面に精通した人種の内では著名な演目が上演されること、その中で水和は不思議な現象に巻き込まれる修学旅行生の役を演じることなど、ゆうやに話して聞かせてくれた。
