
Melty Life
第4章 崩壊
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私室が親に荒らされるというのは、息子に過保護な裕福層でもよくあることらしい。
というのをゆうやが知るのは、もちろん千里の愚痴を聞かされたことがあるからだ。
とすれば帰宅したゆうやの私室に何者かが入った形跡があるのも、実のところ同居しているあの男も、少しくらいは息子を慈しんでいたゆえかも知れない。
私室を物色していった、何者か。それが、同じ屋根の下に住む男──…法の上では父親と呼べる、ゆうやの育ての肉親に絞られることは、明らかだ。
参考書と僅かな雑誌が並べてあった本棚は、ひっくり返って奥面まで露出していた。勉強机や寝台も、くまなく調べた跡がある。めぼしいものが見つからなかった腹いせか、残高四桁の通帳は、床に叩きつけてあった。仕方ないだろう、まとまった金は入り次第、余すことなくあの男の懐に行く。
侵入者が異常な興味を示したらしいのは、机に飾っていたフォトフレームだ。
枠は砕かれている。写真もこまかく破られていた。華やかな洋服を着た小学生の少女と、みすぼらしく目つきの悪い少年が写っていた一枚は、もはや顔を特定出来ない。
