
Melty Life
第4章 崩壊
「水和?」
綺麗と称するに相応しい、百伊の精悍な双眸が水和を覗き込んでいた。
少し掠れた低い声が、ささめきになると尚、優しい。優柔不断な親友を、その声でいっそ叱ってくれないだろうか。
「あかりちゃんには、サービスとか……そういうのがしたくて、声をかけたんじゃないの」
「やっぱり、本命?」
「分からない。ただ、……気になる」
百伊に似ているからだろうか。同性というところをとっても、性別の壁がない分、あかりは理解しやすかった。感じやすい少女達が夢中になるだけあって単純に格好良く、彼女のどこか中性的な雰囲気は、少年に備わる魅力的な部分だけを抜き取って、少女という柔らかな器に注ぎ込んだような、水和ほどの未熟な人間でも、何かしら官能が刺戟を受けないではいられない。
唇を重ねて脳がとろけそうになった。恋愛感情に理屈などいらないのだと、あの瞬間、何か弾けかけた気がした。
ただ、交際だとかの話になると、分からなくなる。何かが大きく変わりそうで怖い。もう少し待っててと口走ったのは、あかりに不足があるのではない。水和の臆病がそうさせたのだ。
あかりとの口づけは、百伊にだけ話した。
水和自身への戒めでもあった。彼女を二度と好きにならない。
最初で、きっと最後の親友とは、ずっとこのままの関係でいたい。
