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Melty Life

第4章 崩壊


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 来学期の行事に備えた業務を進めている内に、室外に昼休み特有の開放感が広がり出した。

 特に大きな行事の有志の生徒らの名簿も完成して、あとは各部活動の代表達との打ち合わせが落ち着けば、千里の今日のノルマは片づく。


「皆、お疲れ様。そろそろ休もうか」

「大丈夫ですか?昼休みに来る部長さんもいらっしゃるかも」

「その時は俺が対応するよ。どのみち終わり次第、今日は早上がりさせてもらうからね」

「お爺様との約束ですね。来須さんは、家が近くて楽しそう。ウチは田舎が遠いから」


 目を細めた衣川が、散乱した書類をまとめてファイルに挟んでいく。他の生徒会役員達も、仕事をひと段落させるための作業に移った。


 千里も机の整頓に手をつける。


 両親達からすれば、祖父母との居住の近さは、あまり喜ばしくないだろう。来須の厳格な家風ゆえ、祖父の隼生はあのようにおおらかな気質でも、旧家の奥方という自尊心が強い祖母は、当然、次期当主である息子夫妻にのべつ監視の目を向けている。千里も祖父を訪ねると、祖母と顔を合わせる度、塾や生徒会は休みなのかと詰問を受ける。

 何はともあれ、祖父はケーキを用意してくれているだろうか。とりたてて甘いものが好きというのではないにしても、甘く口当たりの優しい、それでいて健康を害するほどの糖度はなさそうな祖父の贔屓の店のケーキから、千里は彼そのものを連想する。

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