
Melty Life
第4章 崩壊
「初めまして。来須くんに、学校でお世話になっています。花崎水和です。突然押しかけてきてしまって、すみません」
「千里。貴方が説明しなさい」
「心配して付いてきてくれたんだ。俺が動揺していたから……」
「どういう関係?」
「理花」
理花と呼ばれた母親は、まるで周囲全てを容赦なく拒絶しているような、臆病でナーバスな気色を含んだ眼差しを、千里から隣の配偶者に移した。
目頭を吊り上げる母親を、父親は周囲を横目に窺いながら宥めた。それから水和に向き直ると、まさに今、思い立ったというような破顔を取り繕った。
「生徒会の役員さんですか。千里を心配して来てくれたんだろう、良いお友達じゃないか」
「…………」
「花崎さん。有り難うございます。息子も心強かったと思います」
彼らの誤解を、水和に訂正する機は得られなかった。千里が否定しなかったからだ。どこか母親に怯えた優等生は、水和が反駁しないよう願っていた気がした。
暗く張り詰めた空気が一同を雁字搦めにしていた。
誰も何も発言しない、時間を確認する動作すら白い目に咎められるような雰囲気に終止符を打つようにして、医師が現れた。
