
Melty Life
第4章 崩壊
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昼間から、あかりは知香と、眞雪の部屋に転がり込んでいた。夕方になって帰路まで同道してくれるに至った二人を、今、再び引き返して駅まで送り届けているところだ。
現地解散出来なかったのは、母親からあかりに届いたLINEを覗き見た二人が、その文面に眉をしかめたからだ。
洗濯物を受け取って帰ってくるように。
クリーニングの店へ立ち寄るだけだと説明したあかりに、日頃から穏やかではない親友の家庭を垣間見てきた眞雪は、一人で持ち帰れる量なのかと疑い出した。眞雪の予感は的中していて、二人いてようやっと運べる品数だった。
世間体には抜かりのない母親は、娘の友人達の姿を見るなり、にこやかな物腰で礼を述べた。どうしても手が離せなかっただの、友人と一緒にいるとは知らなかっただの、やたら弁解を並べ立てては、二人を見送ってくるというあかりを笑顔で送り出した。友人達が靴を履く僅かな隙に、当てこすりととれる雑言を娘の耳にささめいて。
軒先を出る時、あかりは知香がある一点を注視しているのが気になった。どうかした、と声をかけると、知香は表札から視線を外した。
「そう言えば私、あかり先輩の苗字、聞いてなかったなって。ごめんなさい、今更で、直接訊けなくて」
「ほんとだ、あたしも言ってなかった。ごめんね」
「二人とも名前呼びしてたもんね。良いんじゃない、仲良いんだし」
「はい。それに、あかり先輩はお名前で呼びたいです。……全然似てませんし、失礼を承知でお話ししますと、実はあまり仲の良くない同級生と同じだったり……」
語尾をすぼめた知香の言葉が誰を指したか、察するのは容易かった。
あかりが知香と出逢った発端。それは彼女が、いわゆるいじめの渦中にいたからだ。どうしてか見過ごすことに気が引けて、以降も、友人を作るのが不得手だという彼女の笑顔が見たいと思うようになって、話し相手を申し出た。
宮瀬という苗字は珍しくない。知香を虐げていた女子グループの一人も、そう呼ばれているのだろう。
