
Melty Life
第4章 崩壊
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病室に移された隼生は、千里が拍子抜けしたくらいには顔色が良かった。
医師曰く過労が老体に堪えたらしく、あとは入院生活を通して規則正しい生活を整えて、自然回復を待つしかないらしい。
母親の理花は仕事に戻った。祖母は外泊準備のために帰宅して、父親も隼生の言いつけに追い払われるようにして、中途にしていた業務の続きをこなしに向かった。
カーテンに差していた茜色は、闇に消えていた。
千里はさんざん情けない姿を見せたことを水和に詫びて、来須家の家政婦を呼びつけた。そして彼女を駅まで送って行くよう頼んだ。
視界の大方が白に覆われた病室は、過剰な清潔感を主張している。それが却って隼生を痛々しげに見せている。千里は寝台の側に腰を下ろしていた。
「悪いのう、千里。せっかく生徒会を頑張って帰ってきたお前にと、ケーキを用意していたのに……」
「おじいちゃんが無事で良かったよ。おじいちゃんこそ、疲れてるんだって?僕の方が、今度は甘いものを差し入れなくちゃな」
「ほっほ。まだ年寄り扱いされるには、早いわい」
本当に、いつもの祖父だ。隼生だ。
もしもの話、隼生の緊急搬送が、もっと得体の知れない病によるものだったとする。検査だけでは済まなかったとする。
千里は今後、何を誰を頼りに、生きていけば良かったのだろう。甘えられる人間が、自分を一個人として見てくれるような大人が、隼生以外に思い当たらない。
