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Melty Life

第4章 崩壊



 千里の口調は、友人が友人に好意を伝える時のそれと変わらない。違うのは、温厚な彼の目がどこを捉えて、そんな歯の浮くような台詞を吐き出したかだ。

 日没を惜しんでいた茜色は、いつの間にか世界の裏側へ潜っていった。それでも千里の頬の色が頭上の月より上気しているのは、水和の距離からなら分かる。 

 こんな想いを唱える時、この少年は、相手の目も直視出来ないほど初々しいのだ。水和と同じで、他人に自身を曝け出すことに慣れていない。どこか上の空なのは、千里は水和が思う以上に、少しつつけばくずおれる、危うい心の一部が怯えている証か。


「……同級生を心配するのは当たり前だよ。来須くんにはお世話になってる」

「ありがと」


 違う。これではあまりにアンフェアだ。友人同士のやりとりにしても、千里から受け取ってきた優しさと、水和が返したものとでは、重みの差が開きすぎている。


 だから何も捕まえておけないのだ。幼い頃、恩人で友人の名前も記憶出来なかった水和は、いつかこの時間さえ過去に置き去りにしてしまうんじゃないか。

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