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Melty Life

第4章 崩壊


「見た目のせいで人見知りなんて信じてもらえなくなっちゃったけど、私は友達との距離も、上手くとれない。匙加減っていうのかな。私が得意じゃないのは、恋だけじゃないんだ。来須くんもそう。少なくとも来須くんの真面目な感じを見ていたら、慣れてないのかもって感じする」

「花崎さんは、初恋だから……」

「初恋って、ずるいよ。おじい様にまで私を守るって言ってもらっちゃって、そんな真剣に考えてくれることが出来るなんて、ノーって言えなくなるじゃない」

「花崎さん……!」



「っ…………」


 あとの会話は聞こえない。聞こえなかった。

 立ち聞きするほど、あかりは来須を気にしていない。
 水和が誰を選ぶかに、水和自身の意思の他にものさしはない。彼女が誰を選んでも、或いはあかり達ではなく全く別の第三者を心に決めても、一度恋い焦がれた少女のためには、その幸せ以外を望んではいけない。来須は、あかりにとって空気だ。ただ水和の日常に含まれているだけの。

 目蓋の裏にこびりついた二つの影から逃げるようにして、あかりは脇道を急ぐ。


 あかりにも微笑むブルーグレーの髪の少女は、得体の知れない、他のクラスメイトにも同じ眼差しを向けていた。時が止まってしまっても、その匂いに包まれていられるのなら永遠でも構わない、そんな水和のまとうオーラに、あかり以外の男も抱かれていた。

 いつしかあかりは、自分だけが、水和と二人きりになれるのだと思い上がっていた。

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