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Melty Life

第4章 崩壊


* * * * * * *

 あのあと水和からの音信はない。

 元々、日々欠かさず連絡をとり合うほどの仲ではない。

 夕食後、食卓を片付けていた間は、帰路に見た水和の優しげな顔を思い起こさないで済んだ。風呂を沸かして、いよいよやりそびれていることが学校の課題くらいになって、気を紛らわせられるものがなくなった。準備するのはあかりでも、入浴は決まって最後だ。

 キッチンと隣接しているリビングに、まだずぼらな両親達の寛いでいた痕跡があったのを、ふと思い出す。咲穂が使っているはずの浴室からシャワーの音がこぼれくる廊下を渡って、さっきまで家族の集っていた一角へ戻ると、やはり父親のシャツやら咲穂の靴下やらが脱ぎ散らかしてあった。


「今頃気づいたの?ついでにこの辺も片付けといて。あとこれ洗濯」


 自分に被さってきた布らしきものを取り払って扉を見ると、母親が衣服の塊を抱えてあかりを見下ろしていた。今しがた母親が投げつけてきたのは、塊に含まれていたタオルの一枚だ。


「明日やっとく」

「今日やれば良いじゃない」

「こんな時間に洗濯機回したら、近所に迷惑……」

「口答えしてんなよ。ウチは音漏れするほどボロ家じゃないでしょ」

「…………。分かった、やっとくね」


 出来るだけ早く眠りたかった。

 しかしあかりの私情は、この母親には通用しない。

 必要としていた気散じ以上の仕事をあかりが引き受けると、母親はだるそうな顔を背けてその場を離れた。

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