Melty Life
第1章 告白
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良い塩梅にほろ酔い気分でいたところに、玄関口から物音がした。
男はシャンパンシロップの入ったチョコレートボンボンを包み直して、残りの酒を飲み干した。
ひとたび解いた梱包は、未開封に戻せない。男の手先が極めて残念なのもあるが、これを包んだ本人に頼んだとしても、直すのであればせめて新しい包装紙を使いたがるはずだ。
帰宅した息子は内鍵を閉めたあとも、男に帰宅を告げなかった。そればかりか忍び足でリビングを通り過ぎていこうとする紺とグレーの制服の影が、ガラス戸に透けて見えた。
炬燵を抜けた男の下半身に、冷気が襲った。アルコールの回った身体は適度に火照って気持ち良かったのに、容赦ない寒気に顔をしかめる。
男は冷蔵庫からペットボトルを引っ張り出して、水を呷った。きんきんに冷えた廊下に出て、今しがた同居人の昇っていった階段を進む。
息子が就寝している部屋を開けると、中にいた異物は泡を食ったような顔を男に向けた。
異物を部屋のあるじと呼ばないのは、ここが彼のものではないからだ。貸してやっているだけだ。
男にとって、この息子は家畜に過ぎない。自分の生活にむやみに干渉させないよう、部屋というゲージに押し込めているだけ。
「……ただいま」
「メシは?」
「何も言われてなかったから……」
男は息子の髪を掴んだ。バァァァァンっっ……と、発育の良い身体ごと、床に叩きつける。
締まった筋肉の覆った身体が木材に崩れた衝撃音が、本人の呻吟をかき消す。