テキストサイズ

Melty Life

第1章 告白


 男は息子に馬乗りになって、もう一度髪を鷲掴みにした。頰をひっぱたく。汚い顔面をいびつな形状に歪ませて、よだれを垂らして目を剥く息子を、右、左、おとがいから殴り上げる。


「ぐぁっ!!ぐふぅっ」

「何も言われなければしないのか!!」

「ごめっ、なさい……」



「金」


 男ははらわたが煮えくり返る不快を吐き出す調子で、もう一つの要求をした。というより、今のが主要か。


「今日は、ない」


ドンッ…………



「それが育ててやった親に対する態度か!!何も出来ないなら帰ってくるな!!」


 男に蹴り転がされた異物は、今度はぐりぐり踏みつけられながら、何か呻いて蹲っている。金を稼ぐから住まわせてやっているだけだ。肝心な時に渡せる金がなくてどうする。

 踵を返して、男は酒を飲み直しに居間へ戻った。

 あの子供と少し同じ部屋の空気を吸っただけで、悪心が男の胸を蝕んでいた。さっきのボンボンでも賞翫すれば気分は持ち直すか。


 このところ可愛がってやっている、いかがわしい店の女が寄越してきた義理チョコ。高級な女はそれなりの返礼をしてやれば、今後のサービスに期待が持てる。女は女で商売だ、気前の良い男を贔屓にしたところで、客から咎められるものでもない。

 一ヶ月後に備えて、またあの異物にまとまった金を工面させなければいけない。







第1章 告白──完──

ストーリーメニュー

TOPTOPへ