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Melty Life

第4章 崩壊



「ごめん、無理」

「何だと」

「ごめんなさい、親子だから。お母さんに悪いと思わないの?」

「お母さんは愛する人だ。お前は所有物、人間が家畜を自由に使って誰が咎める!」



「ごめん、でも、……──っぐ、あ!」



 身を翻したあかりの腕を、父親が捕らえてねじ上げる。その弾みで支えを失くした身体がソファに崩れた。父親があかりにのしかかる。娘の下半身に重心をかけた父親は、股間をじっとり濡らしていた。

 目を血走らせて、だらしなく口許をたゆませた顔が、至近であかりに鼻息を吹きかけている。


「そうか、ここを使ってお父さんを慰めるか」


 父親の指先が恥丘をからかう。
 下方の窪みに指が布越しにちょっかいをかけると、あかりは悪感に弾かれるようにして、首を左右に振った。


「さっきビクビク顫えていたぞ?お前だって良くなっているんじゃないか」

「ほんとにやめて……」


 娘としてさえ慈しんでもいないあかりを相手に、こんな不毛な悪意をぶつけて何故、この男は愉悦に浸った笑みを貼りつけられるのだ。あかりがこの父親の立場なら、耐えられない。何とも思っていない人間を相手に慰みなど求めても、虚しいだけだ。かつてあかりが肉体的交渉に安らぎを求めていた、そして何も残らなかったのと同様に。


 扉の向こうから、咲穂の呑気な声が聞こえた。

 お父さんいるの?次、お風呂だよ。

 父親は普段の優良な声で愛娘に応答すると、ねっとりとした笑みを戻した。


「お父さんと風呂に入るか、言うことを聞かない罰か、選ばせてやる」


「…………親子らしくいられるなら、罰を受けさせて下さい」



 水和が一度でも唇を許してくれたこの身体を、道徳に背かせたくない。汚したくない。


 父親はあかりを庭に引きずり出した。まず先に洗濯機を回すよう命じたところから、母親との会話は耳に入れていたのだと分かった。

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