Melty Life
第2章 初デート
母親の猫撫で声に、次女の咲穂が弾けんばかりの愛嬌を返した。
父親は食事を進めながら、朗らかな母娘に目を細めてからからと笑う。
絵に描いたような家族の光景だ。そこに長女一人いなくても、ひだまりのようなその光景は、成立する。
あかりがバレンタインデーにもらったチョコレートの大半は、友チョコだった。当日持って行っていた小分けは役に立ったにしても、ひと握りの、やたら凝った、案の定中身もお菓子というよりスイーツかと言いたくなるチョコレートを含めて、お返しは追いつかなかった。
それもあって、試験勉強の合間にインターネットの検索をかけてみたり、街へ出たりしたりしてみた。女子が喜ぶホワイトデー。結論から言えば、ネットは参考にならなかった。結局、水和へのホワイトデーに関しては、彼女に詳しいクラスメイトの協力を得た。
せっかく用意していたが、なくしたのは水和へのプレゼントだけ。テストに遅れるわけにはいかない。
あかりは家族の皿を下げる作業にかかった時、つと、花柄のカットソーを着た妹の胸に、見覚えのあるロゼッタがあるのに気がつく。
プラ製のウサギやアイシングクッキーのクロスやティアラ、トーションレースを重ねたサテンのリボンが一面を埋め尽くしたロゼッタ……ピンクが基調で、随所にミントカラーの入ったそれは、ロリィタ系のアパレルブランドから出ているものだ。