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Melty Life

第2章 初デート



「咲穂……それ……」

「あー、これ?お姉ちゃんもしかしてこれ探してた?部屋にあったからもらってきたよ。似合うでしょ」

「悪いけど、それ人に渡すもので──…」

「へ?贈り物じゃなかったんだ。また誰かがお姉ちゃんの外面に騙されて、こんな、らしくないものあげたんだと思ったよ。私なら信じらんないけど。女が女にプレゼントとか」

「あかり、咲穂もお洒落したい年頃なんだ、大目に見てやれ。咲穂、良かったなぁ、可愛いぞぉ」



 同じ部屋で起臥しているのならともかく、家族の持ち物を無断で持ち出す妹に、両親は何の疑問も持たない。むしろ宝探しに成功した子供を褒める調子で、新しい装飾品を飾った娘を称賛している。

 可憐な顔立ちに人懐こい気性、長い髪、華やかで露出の高い服装の似合う、良い具合にまろみを帯びた、それでいて締まるべきところは見事な湾曲にくびれた体型。咲穂のこの特徴を差し引いても、両親は、あかりとたった一つしか年の違わない彼女を贔屓にしている。いっそ彼らに姉妹の子供などいない、いるのは咲穂という一人娘だ。あかりが私学に進めたのも、あくまで彼らの見栄や世間体のためだ。


 朝食は三人分しか用意されていなかった。洗い終えた食器に加えて、咲穂が流し台に投げ入れたティーセットも片付けていると、ぎりぎりの時間になっていた。

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