Melty Life
第5章 本音
外に待機していた来須の自家用車に無理矢理押し込まれたあかりは、今夜も過ごすはずだった家を離れた。
いつの間にか日が暮れて、朧月が昇っていた。
もう顔も見たくなかった。会えば殺意もいだきかねない。そう思ったから、今日は来須に会わないよう、なるべくクラスにこもって過ごした。
今朝の一件で来須は水和を救った一方で、あかりを裏切った。水和への好意を伝えるのに、裏切りも抜けがけもないにしても、今はただ、来須が憎い。そんな男に連れ出されたあかり自身が、もっと憎い。
「わしの使っていない別邸に、信頼の置ける家政婦さんに行ってもらった。あの家にいるよりはマシじゃろう、不自由をかけるかも知れないが、好きに使ってくれ」
「……あの、理事長。別にあたしは、……」
「お前さんに罪はない。わしは出来ることなら会いたかった。わしらの勝手のためにどうにかなる義理など、あかりには全くないんじゃないかのう」
運転手は、やがてあかりの見慣れない道へ、車を走らせていく。