Melty Life
第5章 本音
「忘れなくて良いと思います。出逢って良かったと思います」
飯田の待つ屋敷への帰路、途中の駅まで方角が同じの知香は、電車に揺られながら呟いた。
編み込みからのおさげに結った黒髪には、赤チェックのピンクのリボン。セーラーカラーのブラウスに、バックスタイルがバッスルになったリボンと同布のジャンパースカートを合わせた知香は、化粧も眞雪が施したらしく、惜しみなくピンクを主張したスタイルだ。少し前までこんな格好は似合わないと謙遜していた彼女は、眞雪の勧めに押される内に、今では自らあの少女趣味の友人に教えを請っているらしい。
来須と出かけてどうだったか。
あかりは知香に、正直な感想を話した。
来須はあかりも助けてくれた。十七年も離れていて他人も同然のあかりを、ずっと一緒にいた家族のように接してくれる。だのにあかりは、未だ来須を兄と呼べない。
水和ばかりが今もあかりの中心にいる。結局、あかりは自分の非力を認めるのが怖くて、自分自身が傷つくのを回避して、水和への想いを投げ出したようなものなのに、その矛先を来須に向けることしか出来なくて、そうすることで気持ちの均衡を保っている。
「花崎先輩を好きになって、今のあかり先輩がいるんです。私はそうだと思います」
知香は、ただただ肯定してくれる。
あかりが今にも空白にしてしまいそうな後悔も、水和との日々も、無駄ではなかったと断言する。
「で、知香ちゃんの話も聞かせてよ。眞雪から聞いたよ。告白、全部断ってるなんてもたいない」
「っ、……。眞雪先輩の意地悪」
「仕方ないけどねー。恋に性別は関係あるし。知香ちゃん、女の子の方が好きだもんね」
「そういうわけじゃ、ないです」