Melty Life
第1章 告白
ところで、と、水和は思う。
実家は金持ち、学校での人望も厚い男の感覚は、一般生徒とはどこか違う。
所属している演劇部には確かに遅刻を伝達したが、水和は原因である二人にもそれを伝えることで、影響を最小限に抑えたかった。
特に今日はバレンタインデーだ。早く仲間とチョコレートの交換がしたい。なのに来須は(竹邑は不良なので除外しておく)空気も読まず、未だ用件も切り出さない。
「それで……」
「「あのっ」」
相手が生徒会長であれ不良であれ、早く本題に入って欲しい。
水和が口を開いたのとほぼ同時、視界が華やかでメルヘンチックな色味に染まった。
「え……?」
来須はピンク地に赤い水玉模様の紙袋、竹邑は白いレースプリントの入った黄色い大きな絞り袋を、それぞれ水和に差し出していた。
二人の表情は固い。
来須の今みたいな顔は授業中ならよく見られるにしても、竹邑まで神妙に唇を結んでいる。身長152センチの水和より林檎三つ分は高い背丈の大柄、しかも金髪に口ピアスにネックレスに制服を着崩した不良の、可愛らしい包みを持つ手は、震えている。…………