Melty Life
第3章 春
「宮瀬さん、今日は有り難う」
「こちらこそ、無理言ってすみません」
「水和の熱烈なファンだもんね。ウチの学校、新歓は一年生しか観られないもん。帰宅部は今日登校出来ないんだから、仕方ない」
「助っ人っていうのは、嘘じゃないもんね。本当、有り難う。集合写真は毎年先生に頼んでいて、なかなかすぐに来てくれないから、宮瀬さんがいて助かったよ」
副部長の山下に、百伊、そして水和。
さっきの本番では幼馴染の三人組を演じていた彼女らは、こうしていても、気心知れた雰囲気だ。
あかりはおよそ三十分の舞台に軽く感想を述べて、改めて、上級生達の衣装姿を称賛した。しっかり化粧しているのも大きな要因だろうが、皆、普段とは違う華を感じる。特に百伊は男役の出で立ちでないのが新鮮だ。セーラー服はもちろん、ピンクが多めのメイクも、柔和な印象を添えている。あかりが単純な感動を伝えると、長身短髪の美人というより精悍な上級生は、はにかんだ風に笑った。
「もう、そこ突っ込まれるの何度目かなぁ。だから今回、先生役外れたら、裏方希望って言ったじゃん!」
「部員投票だからね。私も百伊に入れたよ。友達役したかったから」
「右に同じ。大抵の仲良しグループって、一人はお姉さん系いるしねぇ……適役だった」
「はいはい。ありがと。宮瀬さんもありがとね。そうだ、水和とツーショ撮る?」
「えっ」
「スマホ貸してよ。写真、苦手じゃないでしょ」
「ま、まぁ」