Melty Life
第1章 告白
来須と竹邑の告白を一度は妄想したことのある女子生徒は、水和を除けば数知れない。
片やインテリジェンスで、片や教師に目をつけられた落ちこぼれ。彼らの唯一の共通事項は、女子達に常軌を逸した人気があるという点だ。
一年を通して演劇部の活動に没頭している、将来は芝居と結婚する、と友人らに宣言している水和でも、彼らの評判はさすがに知っていた。それが、よりによって二人のどちらにも特に関心のなかった自分が、何故だ。
二人は、 バレンタインデーのプレゼントだという品々を、未だ手前に差し出したままの格好だ。
ここで、答えを迫られるのか?
「っ、……とも、──……」
ジリリリリリリリ──
友達からお願いします、と、口を開きかけたその時だ。
けたたましい警報音が、水和の声をかき消した。
校内放送のマイクの入った音が続いた。
『火災が発生しました。火災が発生しました。ただ今、火元を確認中です。校内に残っている生徒は、近くにいる職員の指示に従って、直ちに避難して下さい』
「何だって!」
聞き親しんだ声の主は、水和達と同級の生徒会役員だった。
これが避難訓練なら、来須が知っていたはずだ。しかし水和と同じく彼の動揺を察したらしい竹邑は、「行くぞ」と叫んだ。