Melty Life
第1章 告白
「普通に割り込んでいけば良かったのに」
マイクを切った役員の少女は、一学年下の少女に振り返って呟いた。
眉を隠して綺麗に揃えた前髪に、耳を覆う内巻きボブ。紺色チェックのセーラー襟にグレーのベスト、襟と同布のプリーツスカートといった制服に身を固めていながら、潤うような肌の色も相成って、生徒会に属する少女は、まるでドールの雰囲気を醸していた。襟元のリボンがほどけているのにも構わないで、ソファで膝を抱いていた下級生の隣に腰を下ろす。
「お疲れ様です、先輩。ありがと」
今しがたの放送を依頼したらしい一年生は、上級の少女の後頭部を優しく撫でると、彼女の唇に自分のそれを寄せた。体温と体温とが、何の躊躇いもなく触れ合う。ただし下級生が接吻したのは、唇の端をちょっと外れた口許だ。生徒会役員の少女の方は、んっ、と小さく声を漏らして目蓋を開くと、大きな目に未練を込める。
「リボン、しっかり結んで下さい。もう行かなくちゃ。あたしみたいなのに引っかかっちゃいけませんよ」
「貴女限定だわ。他の人とこんなことしない。また、会ってくれる?」
上級生の前身頃のボタンを整えて、リボンを結んでやった少女は、たった今まで自分がうずくまっていた席に目を遣る。捨てられそうになっている猫が主人を見上げるような生徒会役員の顔が、少女を引き止めたがっている。