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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第3章 2人の受験生

 パっと見、チャラそうに見えても、やはり受験生。サキさんはけっこう勉強熱心で、ほぼ色白メガネにべったりで次から次へと質問を繰り出していた。そのおかげで色白メガネが鈴にベタベタできなくなったので、俺にとっては好都合だったし、俺の中でのサキさんへの評価がさらにあがった。

 夕方5時まで勉強して、俺たちはそれぞれ家に帰ることになった。塾が入っているビルの1階のコンビニまで一緒に降りる。今から帰るはずなのに、なぜかサキさんがパンとジュースを買っている。

「弟君は、鈴と一緒に帰るの?」
「家、隣同士なんで」
「ふーん。あ、青山君はどっち方向?」
「あ、ぼく、7番の路線バスです」
「そっか。じゃあ、またね」

そう言うとサキさんは何故かまた塾のほうに戻ろうとする。

「あれ?サキさんは、帰らないんですか?」
「うーん。まだ自習室空いてるし、あと1時間ぐらいは頑張ろうかな、と思って」
「そっか。頑張ってください」

 …あんなにチャラそうに見えるのに、人は見た目によらないなぁ。

「サキはね、けっこう家庭環境が複雑なんだよ。お父さんとお母さん、ちょっと仲悪いんだって。だからあんまり家にいたくないんだと思う」

 鈴が、帰りのバスの中で、そう教えてくれた。

「そう、なんだ…」

 それからも、高校生3人の中に一人だけ小学生が混じって一緒に勉強をする、ちょっと変わった勉強会は月に2回から3回ぐらいの頻度で、土曜または日曜に開催された。

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