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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第4章 初詣

「太宰府天満宮は福岡県、北野天満宮は京都府にあるのよ」

 鈴姉が補足で解説をいれてくれる。

「あっ、美羽、福岡も京都もわかるよ!社会で都道府県の名前と場所の勉強したもん」
「そっか、すごいね。県庁所在地も覚えた?」
「えーとね、あれはちょっと苦手。なんで、県とおなじ名前のところと、違う名前のところがあるの?」
「うーん…なんでだろうね…」
「うぅー…」

 誰も答えが出せずに変な空気になってしまったのを取り繕うように、鈴姉が話題をかえてきた。

「ところで、どこの神社に行くの?」
「ねぇ、さっきさ、天満宮は全国各地にあるっておにぃが自分で言ってたじゃん。総本社は無理でも、近いところの天満宮に行けばいいんじゃない?」
「近くって言ってもな、徒歩じゃ遠いんだよ」
「あ、俺、車出そうか?」

鈴姉ん家のリビングでどこへ行くかの相談してたら、和兄(かずにい)が話に入ってきた。最近免許を取ったばかりなので、運転が楽しいらしい。

「あれ?お兄ちゃん、バイトは?」
「今日は休み!」

 大学生の和兄はコンビニでバイトをしているので、年末年始でも関係なく忙しいのだが、今日はたまたま休みだそうだ。結局、おばさんの軽自動車を借りて、和兄の運転で4人で天満宮に行くことになった。

 運転席に和兄、助手席に鈴、和兄の後ろが俺、その隣が美羽だ。



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