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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第6章 新しい世界、新しい生活。

窓から下を眺めていると、美羽ちゃんが帰ってきたのが見えた。

「美羽ちゃ~ん」
「あ、鈴ねえちゃん!!」

美羽ちゃんが気付いてこっちを見上げてきたので、ジェスチャーでウチに来るように伝えて玄関まで迎えに行く。

ガチャ。

「…おじゃましま~す」
「いらっしゃい」

「美羽ちゃん、背が伸びたね~」
「うん、学年で一番大きいからね!」
「すんごいちっさい頃から見てるから、感慨深い」
「おにぃは学年平均ぐらいっぽいけど…」
「あ、そうそう。樹のさ、想い人の話、覚えてる?」
「えっと…」
「初詣の時に話した、塾で一緒のサキちゃんて子」
「あ、あぁ……。そういえばそんな…」
「そのサキちゃんが今度ウチに遊びにくるから、ちょっとぐらいなら顔出してもいいよ、って樹に伝えてあげてくれる?」
「わっ…かりましたぁ…」

やっぱり、お姉さんとしては弟の恋を応援したいというか、まぁ、ここからどう頑張るかは本人次第だけど、会う機会のセッティングぐらいは協力してあげなくちゃね。
サキちゃんのほうも、樹のこと気に入ってるみたいだったしね。

あっ、でもメイクの練習って男の子は興味ないよね。完成披露会的にメイクが出来あがってから見に来てもらう感じがいいかな。美羽ちゃんも一緒に…。
んで、どこかで私が美羽ちゃんを連れだしてサキと樹を二人っきりにして…。よし、それで行こ。当日のシナリオをパパッと考えた私は、

「美羽ちゃんも一緒に来てね」

帰りかけていた美羽ちゃんの背中にむかって、そう付け加えた。



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