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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第8章 入学式

「あの、どうして私の名前を?」
「うん、以前、あいつのスマホが鳴ってた時に、登録の名前と顔写真が見えてさ」
「あの、ところで、中村君は…」
「おれも中村なんだけど(笑)まぁ、君が言う『中村君』は啓太のことだよね?」
「あっ、なんかすみません…」
「たぶん、式サボって、今頃、女のところに入り浸ってるんじゃないかな~」
「えっ…。中村君って、彼女、いるんですか?」
「あぁ、いるよ」

そんな…。入学式早々、本人に会う前に失恋?!思いもかけない展開に目の前が真っ暗になった。その時、

「兄貴っ!!適当なこと言ってんじゃねーよ」

いつから近くに居たのか、いつの間にか中村君がそこにいた。

「中村君っ?!」
「啓太っ!?」

「誤解するような言い方すんなよ」
「なんだよ、式に出てないのも、女のところに行ってたのも事実だろ」
「女って…俺らのばーちゃんだろ」
「ばあちゃんだって女だろ?それともばあちゃんは男なのか?」
「ったく、屁理屈多いよ、兄貴は…」
「??? あの???」

私は訳が分からなくて、頭の中がハテナでいっぱいだ。
そんな私を見て、お兄さんが教えてくれた。
「こいつ、小さい頃から大のおばあちゃん子でさ、今日も入学報告を兼ねてばあちゃんの入所してる施設に行ってたんだ」

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