テキストサイズ

僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第9章 怪我の功名?


「うきゃあっ?!」

バランスを崩してこけかけた瞬間、変な声は出てしまったが、それでもとっさに後ろに手を出した私の反射神経は我ながらなかなかなもんだったと思う…けど…。

「ん~~……」

あまりの痛さに、地べたに座りこんだまま、痛む手首を押さえて声にならない声で唸ることしか出来ない。

「「石井さんっ、大丈夫?」」

中村君とお兄さんの声がハモる。

「ん~ん…」

声も出せず、ただ首を横に振って『大丈夫じゃない』の意思表示をする。

「大丈夫じゃなさそうだね…医者に診てもらったほうがいいな。啓太!お前、付き添ってやれ」

痛がる私の傍にひざまづいたお兄さんが、涙目になっている私を見てそう言った。

「石井さん、行こうか。立てる?」

手を差し伸べてくれる中村君。同じ顔のイケメン二人にこんなに優しくされたら…別の意味で大丈夫じゃなくなるよ~。

「病院なら、一人で行けるので大丈夫です」

「女の子にケガをさせて、ほっとくなんて出来ないよ」

「そんな。私が1人で勝手にこけただけですから」

私とお兄さんが会話してる間、中村君が誰かに電話をかけている…。……彼女かな?

「伯母さんに聞いて、オススメの整形外科教えてもらったから、とりあえず、送るよ。荷物は…?」

「あ、今日はこれだけ…」

部活の練習がある日なら楽器ケースにトランペットを入れて持ち歩くんだけど、今日は入学式ということもあって、小さめのハンドバッグにスマホと財布とハンカチをいれてるだけだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ